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第1回ロンドン万博で「環境問題」が勃発していた
写真:水晶宮前景(正面、近景)
出展:国立国会図書館「博覧会-近代技術の展示場」

第1回ロンドン万博で「環境問題」が勃発していた

2024.09.06

~3本の楡の木を守った設計変更~

 2005年に開催された「愛・地球博」が、環境を大きなテーマにして以来、環境問題を取り上げる万博が多くなりました。2008年の「スペイン・サラゴサ万博」では「水と持続可能な開発」、2015年の「イタリア・ミラノ万博」では「食」をテーマに、人口急増や気候変動を背景にした食糧需給の不均衡や飢餓・飽食にスポットが当てられ、2017年の「カザフスタン・アスタナ万博」では「持続可能なエネルギー」をテーマに開催されました。

 環境は万博と切り離せない問題になったかのようですが、実は1851年に開催された第1回ロンドン万博で、すでに「環境問題」が勃発していました。会場はハイドパーク。そこに巨大な建造物を建てることになっていました。「クリスタル・パレス」がそれで、鉄骨と30万枚のガラス板でつくるというもの。当時の建築物としては画期的なものでした。18世紀後半から始まった産業革命により世界をリードしていたイギリスの国力を、世界に示す象徴的な建築物でした。

 しかし計画が明らかになるにつれ、ある問題が生じます。クリスタル・パレスを建てるため、3本の楡の巨木が伐採されるというのです。この木はロンドン市民に愛されていたので、市民は反対運動に乗り出します。

 反対運動を受けて考え出されたのが、楡の木を建物の中に取り込む方法です。これならば木は切らずにすみます。

 こうしたアイデアが考えられたのは、クリスタル・パレスを設計したのが庭師だったからかもしれません。ジョセフ・パクストンという名の庭師は、公爵邸に雇われたりしていましたが、のちにガラス張りの巨大温室をつくることに成功するなど、当時の傑出した建築家でもあったのです。

 クリスタル・パレスの中には、イギリスのみならず、世界各国から出品された美術品や発明品などを陳列する一方で、室内にヤシ・シュロ類、観葉植物類を配置しました。だから楡の木も建物の中に入れてしまおうと考えたのかもしれません。当時の写真を見ると、楡の木を取り込むために、天井の中央部分を半円形に設計変更した建物が、木を守っているようにも見えます。

 木の命を守り環境への関心を高めたことで、万博の価値や意味合いを暗示する建物だと言えます。

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TOPPANホールディングス株式会社
万博・IR推進室 チームエキスポ共創事務局
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