出展:NTT技術史料館
「電話」が初公開されたフィラデルフィア万博
2024.09.06
~携帯電話の原形「ワイヤレステレホン」は70年大阪万博で~
いまやスマートホンを誰もが持つようになりましたが、離れた人と音声で会話ができる電話が最初にお目見えしたのは1876年、フィラデルフィア万博です。アメリカにとって初の大規模な万博となりました。
電話を出展したのはグラハム・ベルです。ベルは万博に先立ち、同年3月に特許を取得、間もなく、史上初めてとなる電話によるメッセージ送信に成功しています。そのメッセージとは助手へのもので、「ワトソン君、ちょっと来てくれ。用事がある(Mr.Watson,Come here;I want to see you.)」。
万博期間中、ベルは1日だけ電話を展示するパビリオンを訪れ、デモンストレーションをしました。世紀の発明品をひと目見ようと、大勢の人が詰めかけました。万博の翌年には「ベル電話会社」を設立、のちに「AT&T」と社名を変え、一時は従業員100万人のマンモス企業になりました。
そのAT&Tが1964~65年に行われたニューヨーク万博に、テレビ電話を出展しています。「ピクチャーホン」というもので、楕円形の画面に映る相手の顔を見ながら話すというデモンストレーションが行われました。パビリオンでは、テレビ電話の他に、ブッシュホンや海底ケーブルなども紹介されていました。
それから5年後の大阪万博では、携帯電話の原形ともいえる「ワイヤレステレホン」が登場します。日本電信電話公社(のちのNTT)が開発した新型電話でした。ワイヤレステレホンの本体は、いまの固定電話の子機よりもかなり大きく、番号ボタンも付いていました。展示された「電気通信館」では、ワイヤレステレホンの体験も行われ、約65万人が未来の電話に触れました。
日本でテレビ電話が最初に市販されたのは、大阪万博から20年近くあとの1987年でした。ソニー製の「みえてる」がそれです。ただ1分間に数フレームが映るだけで、実用にはほど遠いものでした。しかし90年代にISDN網が普及し固定式のテレビ電話の利用が進み、2000年代にはインターネットの高速化により、テレビ電話の利用者が急速に増えました。
「生きていることは素晴らしい。この世界は面白いことでいっぱいだ」とはベルの言葉ですが、未来にはどんなコミュニケーションの形が待っているか、楽しみです。